介護現場や介護士になりたてのスタッフに向けた研修において、よく話が出る「傾聴」についてお話させて頂きます。
私は今でこそ、その大事さを分かっていますが、恥ずかしながら介護職員になりたての頃は全く分かっておらず、「出た、精神論」程度にしか思っていませんでした。
障害があったり、認知症であったりしても要介護者も人なわけで、当然その姿勢は伝わります。
私が傾聴を理解した時の話を少しだけします。
ある女性利用者が物取られを強く訴え、とても仲良かった人と険悪な関係になり顔を合わせれば喧嘩になるというような状態でした。私の夜勤でその人が相手の居室のドアをドンドン蹴っているのです。私は居室に連れて行き、話を聞きました。
泣いていたのもあり、真剣に話を聞いているうちに落ち着き、お兄ありがとうと言って手を握ってきたのです。
ふと、「あ、これが傾聴か。精神論どころか人対人のあり方なんだな」と思いました。やっと傾聴を理解する受入準備が自分の中に整ったということもあったのでしょう。
さて、傾聴とは心を対象者に傾けて聞くことを言います。表面上の言葉だけをただ受け取るのではなく、何故・どのような思いで・相手はどのような背景からそのような言葉を発しているのか等を汲み取って聞くのです。
字にすればたった2文字の行為ですが実践するのは、至難です。相手の背景や性格等も織り込んで聞き、引っくるめて受容する姿勢がなければ「聞く」で終わってしまうからです。
そのために最低限必要なものとしては、想像力・経験・受容する心・感情コントロールです。
想像力や経験は、トレーニングや時間で解決できますが、受容するというのは、そうはいかないので難しく、どうしても介護者自身の考えや感じ方などの下で捉えてしまいがちですね。
でも、そうしてしまうと相手が伝えようとしているのとは違うように捉えてしまったり、受け入れにくいようになってしまうこともあります。
その溝が少し且つ稀であれば、大丈夫ですがそうでない場合は修正が必要です。
また、聞き手の感情が平静でないといけないのは、やもすると否定してしまいかねないからです。
受容する心と感情コントロールのためには、強いて文字に起こすのであれば、人間性を磨く・心の感度を上げていく、とでも言いましょうか。これで随分と違います。物事を自分以外の尺度で観れるようになるので。
最後に傾聴についてのポイントがまとめられているページのリンクを貼っておきます。
https://www.resource-port.net/blog-keityou1/
1人でも想いを傾聴してもらえる利用者が増えれば幸いです。